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REPORT

市場に行かない八百屋と本当に美味しい野菜の話(後編)

先日「畑に行く八百屋 SANUKIS」の鹿庭大智さんを迎えて行われた「SANUKIS 四国野菜を知る会」に参加してきました。

▼【前編】はこちら


市場に行かない八百屋と本当に美味しい野菜の話(前編)

 

会の前半では、鹿庭さんが畑に足を運ぶ理由、生産者と消費者の関係の在り方についてお話しをお聞きしました。

後半では、「SANUKIS」で仕入れている野菜をいただきながら、実際に鹿庭さんが仕入れている”良い野菜”とはどのようなものなのか、生育方法などを具体的にお聞きします。

テーブルには「SANUKIS」が四国各地から仕入れている色鮮やかな野菜がずらり! 鹿庭さんお手製のドレッシングもご用意いただきましたが、まずは何もかけずにそのままいただくことに。


トマト、蓮根、大根、人参などのお馴染みの野菜に加え、ヤーコンという中南米が原産の野菜や、皮から果肉まで紫色をした紅くるりという新種の大根など、あまりスーパーでは見慣れない野菜もありました。どれも野菜自体の味が濃く、香りや甘みがしっかりしているので「このままお酒のあてになりそう」と話しながらムシャムシャいただきました(笑)。

お酢とオリーブオイル、もち麦、塩コショウだけでつくったシンプルなドレッシングもかけていただきます!

「SANUKIS」の野菜を食べて一番に感じたのは、味の濃さ! 通常野菜を食べるときは、サラダにしてドレッシングをかけたり、炒め物など調理して食すことが多いですが、「SANUKIS」の野菜はしっかり味がするので、「スナック菓子のようにこのままいくつでも食べられそう!」と思うほどでした。普段から野菜は好きでよく食べる方ですが、改めて「野菜って美味しいな~」と感じることができました。

では、そんな野菜をつくる農家さんたちはどのように栽培しているのか、普段スーパーで購入する野菜と何が違うのでしょうか?

”良い野菜”をつくる農家のこだわりは土づくり

「良い野菜をつくる農家さんは、とにかく”土づくり”にこだわっているんです」

たしかに、”野菜づくりはまず良い土づくりから”というのはよく聞きます。土づくりというと、やはり肥料が重要でしょうか?

「いえ、大切なのは土中の微生物です」

鹿庭さんによると、多くの野菜に共通して最も重要なのは、土中の微生物をうまく働かせることなのだそう。

一つの野菜に絞っても、栽培方法や土づくりにはいくつもあるそうですが、土の中にいる何千種類もの微生物の中で、特に栽培に有益な微生物がいて、それが野菜にとって良い土壌環境をつくりだしてくれるそうです。

有益な微生物が働く畑で栽培された野菜は、

・ゆっくりとバランスよく細胞ができていくので、健康に育ち、丈夫

・養分をしっかり吸収するので甘みがでる

・微量要素*をよく吸収できるので味が濃くなる

・野菜が本来の力を発揮でき、抗酸化作用などの機能性が強くなる

・過剰な肥料が畑から流出しないので地下水などの水質環境が保たれる

と、良いことづくめなんですね。

*微量ではあるが、植物の生育に必須の鉄分、マンガン、カルシウム、硫黄などのミネラルのこと

「しかし微生物は、土中の窒素と炭素のバランスが崩れるとうまく働きません。窒素が少なすぎると生育不良となり、逆に多すぎると生育障害や病気になることもあります。さらに、土中には栽培に有益な微生物だけでなく、有害な微生物もいるため、”野菜に有益な微生物にとって良い土中環境をつくる”ことがポイントになるのです」

無農薬が良いとは限らない!? ”良い野菜”の本質とは

土中の微生物の働きが重要ということをお聞きしてきましたが、農家さんたちはどのようにして土中環境を整えているのでしょうか?

「微生物の働きに重要な窒素は、有機肥料でも化学肥料でも与えることは可能ですが、化学肥料では土がかたくなってしまいます。有機肥料でも使うものによっては炭素と窒素のバランスが崩れて微生物がうまく働かない。無農薬栽培でも、土壌環境のよくないところで栽培された野菜はただ弱い野菜になり、味も落ち、虫もつきやすくなります。本当の意味でこだわって栽培するというのは、何を、何のために、どのタイミングでどれだけ使うかを理解したうえで、土と植物の成長を見ながら様々な管理をすることです」

農家さんたちは、肥料を使うか使わないか、化学肥料なのか、有機肥料なのかということだけでなく、そもそも「なぜ肥料を使うのか」ということから考えて栽培してらっしゃるということがわかりました。無農薬の野菜が一番良いものだと思っていましたが、一番大切なのはどのような土で育ったかということなのですね。

「そうですね。肥料を使わずに痩せた土で栽培された野菜は栄養価も低いですし、養分が無いので弱い野菜になってしまいます。よく、虫食いのある野菜は美味しいと思われていますが、虫が食べるのは栄養の無い土で育った弱い個体だからです。肥料を使っていても使っていなくても、良い土で健康に育った野菜は美味しく、栄養もあり、虫がつきません」

虫食いの野菜は、「虫が食べるほど美味しい」という話をよく聞いていたのでびっくりしました。

ここまで聞いてようやく、”畑に足を運ぶ理由”が腑に落ちた気がします。
農薬をたくさん使えば見た目も良く、収穫量が増えるなど、販売側にとっては都合の良い野菜ができますが、手間暇かけながらも土と野菜を高いレベルで管理しながらつくることが、栄養も豊富で地球にも良く、これからもずっと継続していける栽培方法なのだとわかりました。そして、それを実践してくれている農家さんの野菜を選び、買い叩くことなくふさわしい価値観で支えていきたいですね。

美味しい野菜は見分けられる? 見た目でわかるポイントとは

さて、鹿庭さんは畑に行き、農家の方に会うことで良い野菜を仕入れていますが、よくテレビや雑誌などで、”美味しい野菜の見分け方”といった特集が組まれているのもよく見ますよね? 店頭に並んでいる野菜の中から”良い野菜”、”美味しい野菜”を見分けることはどの程度可能なのでしょうか?

今回は、今の季節に人気の野菜3つを例にお伺いしました。

1.トマト

「トマトは、お尻部分から放射線状に線が出ているのがおいしいと言われますが、一概にはそれが全てではありません。大玉トマトやフルーツトマトは下手の周りの肩の部分が張っていてもりあがってる方が濃いです。あとは、艶があって濃くなりすぎてないもの。完熟しすぎると味が落ちるためです。また、糖度が高いだけのトマトは作りやすいですが、酸味も大事です。甘さ・酸味・コク(味)がないと美味しくはないですが、コクの部分はなかなか見て判断は難しいですね」

2.ナス

「ナスは成長が早いほど柔らかいのです。ナスの実とヘタの境の色が薄くなっているのですが、色の薄い部分の面積が大きいほど身も皮も柔らかいです。色の薄い部分は夜のうちに成長して日光に当たっていないところなので、そこの面積が大きいほどすんなり成長して柔らかいはずです」

3.キュウリ

「トゲの付いているものが新鮮とよく言われますが、最近のキュウリはもともとトゲが少ないものが多いのでトゲはあんまり判断材料にならないかもしれません。あと、均一な太さでまっすぐ伸びているものが良いです。曲がっているキュウリとまっすぐなキュウリの味が同じと言うことはないのです。すんなりまっすぐ伸びている方がみずみずしく雑味も少ないです」

なるほど。見た目だけでも判断できることがあるのですね!

「ですが、見た目で判断できるのは生育具合や鮮度、糖度くらいであって、味の濃さや臭み、エグみは無いかなど、本当の美味しさは食べてみないと判断しにくい所の方が多いです。実際、美味しいトマトができる木から、形が変形したものがとれてもそれは美味しいことが多いです。変な形のナスも、木が元気すぎて変形したものがとれることもあります。
判断材料としては、やはり生産者さんを選ぶことが本当に美味しい野菜にたどり着きます。その中でもちゃんと美味しい野菜を見分けて出してくれる農家さんとの信頼関係が大事です。毎日見ている農家さんにしかわからない判断や区別を素人がしようとしても無理なこともありますね」

やはり本質は、生産される環境を知って、信頼できる生産者やお店で購入することが大切ですね。見分け方があると言っても、本質がわかるわけではないので、これを忘れずにしっかり選択していきたいです。

前・後編でお伝えした鹿庭さんのお話しですが、私自身も野菜や食材に対する意識が変わるきっかけとなりました。毎日の習慣である”食事”という行為は、習慣だからこそ軽く考えがちなものとなっていましたが、食べ物が自分自身をつくっていること、食材が生まれる環境やその地域、生産者のことを考えると自然と選択が変わってきますね。

店名 畑に行く八百屋 SANUKIS
住所 香川県高松市今新町7-10 武田ビル1F
TEL 087-813-0883
営業時間 平日 … 10:00~18:30
土曜日 … 10:00~17:00
定休日 日曜・祝日

編集部えりか

東北ののどかな田舎町生まれ。大学卒業後は出版社に就職し、編集者に。ライフスタイルやインテリア、ティーン雑誌などを経験し、先輩たちから編集の心得を叩き込まれる。楽しくも怒涛の日々を過ごすが、食事はほとんどコンビニ飯。それに飽きた為に転職し、イケてるIT企業でお菓子を食べながらSNSの更新をしていたが、「美味しいものを味わうためには健康でいなければ!」ということに突然気がつき、美味しくて体にも心にも良いモノやコトを探求しはじめる。好きな食べ物はチョコレート。